この舞に思いを込めて/プロローグ

女装小説
  

各地からフラグループが集まっての、発表会。
プログラムは順調に進んでいた。

控室ではクムフラが、チームを集める。
「もうすぐね。みなさん、最後の準備をしましょう。」
チーム全員で手を繋ぎ、輪になりながら向かい合う。そして、他のチームの邪魔にならないよう、小声で ”E ho mai” を唱え、祈りを捧げる。

奏でた最後に、繋いだ手を、軽くぎゅっと握り合う。
ちょっとだけ、引き締まった気持ちを感じる。
「じゃぁ、楽しんで、行きましょう。」
「がんばろうね!」
「みんなで楽しみましょうね」
この日に向けて共にがんばってきた仲間たちと、お互いに励まし合いながら、控室を出て行く。

順番はいよいよ次。ステージ裏に並んだ。
前のグループが踊る曲が流れる中、入場を待って一列に並んだ。
最後列から仲間たちを眺めていると、若干緊張した表情もいくつか見られた。
心の中で「大丈夫、がんばって!」と声をかける。

みんなでわいわい言いながら選んで揃えた、真新しい衣装。
カウアイ島の曲に合わせ、紫を基調とした、パウトップとサーキュラースカート。
胸にはレイ、頭にはヘアクリップ。
この、お揃いの素敵な衣装を着けている自分を思うだけでも、うれしさのあまりにすっかりテンションが上がっていた。

クムフラが列の前の人から一人づつ、これまでの練習のねぎらいと、いよいよ始まるステージへの励ましのことばをかけている。緊張をほぐすよう、笑顔を込めながら、丁寧に。

そして列の最後、わたしの前までやってきて、声をかけてくれた。

「いよいよステージね、よくがんばったわね。いっぱい楽しんできてくださいね、栄一さん!」
「...あの、いまは七海(ななみ)って、呼んでもらえますか?」
「あっ、そうね、ごめんなさい!」
クムフラも仲間たちも、クスクス笑っている。自ずと緊張感が和らぎ、いい雰囲気となった。

女性たちの中で、たった一人の、男性。
しかし、衣装と心を共にした仲間が、ここにいっしょにいる。
周囲には怪訝な目で見る者がいない訳ではなかったが、まったく気にならなかった。

「でもね、七海さん。」
「はい。」
「今日のあなた、とってもきれい。最高よ。」
最後のクムフラからのこの言葉に、一瞬目頭が熱くなっていた。

出番までの待ち時間、このステージに立つまでの思い出が、暫し頭を過った。
藻掻き苦しみ何もかも見失っていた自分が、いまここに、ありのままの姿で立っている。
そしてまた、心の中で呟いた。

「ほんとうに、いい世界、いい仲間たちに、助けられて、よかった...」

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