( 第二章 よりつづく)

その日を境に、二人の逢瀬はより深く、官能的な熱を帯びていった。
密会を重ねるたび、拓哉は隆一の手でセーラー服に身を包み、彼の思うがままにその身体と心を委ねた。
激しく求められ、男らしく力強く抱かれるたびに、拓哉の隆一に対する愛は深まる一方だった。
隆一もまた、自分のためだけに「女」になってくれる拓哉を心から愛おしく思い、激しい情熱を注ぎ込んでくれる。
重ね合わせる肌と肌のぬくもりを通して、拓哉はその深い愛を直に感じ取り、心の底から満たされていた。
何度か時を過ごすうちに、拓哉は次第に隆一が好む服のデザインやシルエットがわかるようになってきた。
(もっと綺麗になって、隆一さんを驚かせたい……もっと好きになってもらいたい)
胸の奥でその想いが尚更強くなった拓哉は、やがて自ら女性物の衣服を選んで購入し、隆一と会う際に持参するようになった。
ホテルの部屋でそっとその服に着替え、恥ずかしがりながらもその姿を見せると、隆一は歓喜に目を輝かせて自分を抱きしめてくれる。
その喜ぶ顔を見ることが、拓哉にとって何よりの生きがいとなり、心が踊るような時間となっていた。
自室のパソコンの画面で、女性物の洋服や可愛らしい下着を選ぶ時間は、日常の中で最も楽しく心躍るひとときだった。
通販で届いた可憐なブラウスやミニスカートを部屋のカギを締めてそっと袖に通し、鏡の前でクルリと回って自分の姿を確かめる。
「隆一さん、このお洋服、気に入ってくれるかな……?」

鏡に映る可愛らしい自分の姿に気恥ずかしさを覚えながらも、大好きな隆一のために装い、まるで恋する乙女のように綺麗になっていくプロセスそのものが、拓哉の日常をこの上ない幸福感と充実感で満たしていた。
しかし、その幸せな時間はあまりにも唐突に終わりを告げた。
また新しく用意した服を鞄に忍ばせ、次のデートを指折り数えて心待ちにしていた拓哉の元に、隆一からの連絡がピタリと途絶えたのだ。
最初は仕事や家庭の都合で忙しいのだろうと思っていた。
だが、数日が過ぎ、一週間が過ぎても音沙汰がない。
心配と不安に押し潰されそうになりながら送ったメッセージには、「既読」の文字すらつくことはなかった。
毎夜、静まり返った自室でスマホの画面をじっと見つめ、カレンダーの数字が進むたびに募る狂おしいほどの孤独に耐えた。
(どうして……? 隆一さん、いったい、なにが起こったの……?)
事故に遭ってしまったのかもしれない。
急病で倒れたのかもしれない。
あるいは、最悪の形で家庭に知れてしまったのか――。

どれほど胸を痛めて案じても、拓哉には確かめる術がなかった。
本名も、住所も、勤め先すら知らない。
ふたりを繋いでいたのは、画面の向こうの薄いアカウント一つだけだったのだ。
自分の無力さに涙を流し、膝を抱えて夜を明かす日々が続いた。
それでも拓哉は、「いつかきっと連絡が来るはずだ」と信じ、ずっと隆一を待ち続けた。
一ヶ月が過ぎ、季節が変わり、待てども待てども返信はないまま、無情にも時だけが過ぎ去っていった。
( 最終章 へつづく)

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