●あらすじ
21歳の大学生・拓哉には、誰にも言えない秘密があった。それは、男性でありながら男性に惹かれてしまうこと。そして、身体だけではなく、心の底から愛し合える男性との「真実の恋」を求めていることだった。
ある夜、男性同性愛者向けの掲示板で出会ったのは、59歳の「隆一」。家庭を持つ年上の紳士との、誰にも知られてはいけない恋。それでも二人は少しずつ心を通わせ、やがて本当の恋人同士になっていく。
そんなある日、隆一が拓哉に差し出したのは――、女性用の下着と、一着のセーラー服だった。
「拓哉……これを着てくれないか?」
大好きな人の願いなら、何でも叶えてあげたい。
最初は戸惑いながらも、拓哉は隆一のために女装することを受け入れていく。そしていつしか、隆一の前で「女」になることが、拓哉自身にとってもかけがえのない幸福になっていた。
もっと綺麗になりたい。もっと喜んでもらいたい。もっと愛してもらいたい。
恋する乙女のように女性の服を選び、鏡の中の自分を見つめる拓哉。
しかし――、幸せな日々は、ある日突然終わりを告げる。隆一からの連絡が、途絶えたのだ。
事故なのか。病気なのか。それとも、家庭に二人の関係を知られてしまったのか。
理由すら分からないまま、拓哉はただひたすら、愛する人からの連絡を待ち続ける。
そして迎えた、東京を離れる最後の日。隆一に見せることができなかった「女の子の服」を前に、拓哉が選んだ答えとは――。
これは、誰にも言えない秘密から始まった、ひとりの青年と年上の男性との、女装と恋の物語。
第一章「暗闇で見つけた光」
拓哉と隆一との出会い。

好きな人の前でだけ、僕は女になる/第一章「暗闇で見つけた光」
拓哉は二十一歳の大学生だった。地方から上京して一人暮らしを始め、大学での講義やバイト、友人たちとの付き合いなど、表向きはそれなりに楽しく充実した日々を送っている。しかしその胸の奥底には、誰にも明かせない深い秘密と孤独が渦巻いていた。男性であ…
第二章「開かれた扉と秘密のドレスコード」
隆一の願いを受け入れる拓哉。

好きな人の前でだけ、僕は女になる/第二章「開かれた扉と秘密のドレスコード」
( 第一章 よりつづく)数週間後、二人はいつもの隠れ家のようなラブホテルにいた。ふたりきりになれるこの時間が愛おしく、部屋の鍵が閉まった瞬間、吸い寄せられるように熱いキスを交わした。「お湯、ためてくるね」拓哉が立ち上がろうとした時、どこか思…
第三章「届かないメッセージ」
拓哉の切なる思い。

好きな人の前でだけ、僕は女になる/第三章「届かないメッセージ」
( 第二章 よりつづく)その日を境に、二人の逢瀬はより深く、官能的な熱を帯びていった。密会を重ねるたび、拓哉は隆一の手でセーラー服に身を包み、彼の思うがままにその身体と心を委ねた。激しく求められ、男らしく力強く抱かれるたびに、拓哉の隆一に対…
最終章「さようならの衣装」
拓哉の旅立ちのとき。

好きな人の前でだけ、僕は女になる/最終章「さようならの衣装」
( 第三章 よりつづく)春のやわらかな風が街を吹き抜ける頃、拓哉は大学の卒業式の前日を迎えていた。卒業後は東京を離れ、地元に戻って就職することが決まっている。隆一と出会い、愛し合った思い出の詰まったこの部屋を引き払い、明日にはこの街を旅立つ…
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